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'10のNZ記

※ちょっとだけよの旅(10/4/24アップ)
 日本の川はもうすかり解禁されて久しい4月の4日、駅のホームで上野行きを待っていると「お!また行ぐのが?」と後ろから声。我が町は小さな田舎町ゆえ知り合いに会うことは珍しくない。声の主は大きな居酒屋を営んでいる社長。「ハイぃ〜」と言うと「あんだは気楽でいいよなぁ〜」だと。オラだってそんなに気楽に生きているわけじゃねぇと言いたかったけれど、彼のような社長人生と比べりゃ、そりゃもうごもっとも、というわけで、「ハイぃ〜!」と力強く言うしかありましぇん。
 しかし、やはりオラだってヒマを持て余しているわけじゃないんだな。その証拠に今回の旅は超短期の2週間!すっかり普通のヒトの日程である。なんだか分からないけれどいろいろ忙しい。大した用事じゃないのだけどいろいろと・・・。「こういうことって、つまりトラウトバムは卒業ってことなのだろうか」な〜んて物思いにふけっていると、今度はジジババグループがオロオロした様子でアーでもないコーでもないと騒いでいる。聞いていると、指定席の券を買ったんだけど、並ぶべき場所が分からないらしい。オラ、駅員でもないのに彼らを助け、「ホレみなされ、オラだってやっぱり忙しいんだよ」とつくづく思ってしまうのであった。
 今回は一人旅。退屈である。こういうときに限って飛行機での隣の席はさっぱり愛想もないヤツが座り、一言も発せずにシンガポール着。NZ行きに乗り換え、さて隣の席はと見てみれば、アジアのおばちゃん。一応コンチワと言うと、笑顔でニィハオ、中国語しかしゃべれないと英語で言う。ほんとかなと思って英語で話しかけると今度は中国語しか返ってこない。それでオシマイ。こういうときは映画でも見ようとヘッドホンを付けると、これがなんと聞こえない。スッチャさんに替わりを持ってきてもらうが、やはりダメ。座席のジャックのほうに問題があるようだ。どうしようもない、寝る!
クライストチャーチ着。到着ロビーに出ると、佐藤さんが向こうで手を振って出迎えてくれた。久しぶりに見る佐藤さん、頭が丸刈りに、腹ちょい出、ニコニコ顔は変わりなし。
 佐藤さんがクィーンズタウンからクライストチャーチに引っ越してきてからというもの、いつもこういう風に出迎えてくれる。今回などはレンタカーまで手配してくれた。到着地に友達がいるというのは嬉しいことである。
 さて、レンタカーに佐藤さんちに置かせてもらっていた釣り具や着替えをそそくさと載せ、出発。暗くなる前にマタウラに着きたい。夜道は飛び出してくるウサギが何匹か必ずいる。それを100キロのスピードでゴトンゴトンとヤルのはあまり気持ちの良いもんじゃない。
 7時間後、マタウラ川沿いのピーターの家。今回の泊まりはピーターんちなのだ。ピーターが居ないので電話してみると「今ゴアだからすぐ帰るよ」。少し待つと数年程前までオラが乗っていたビッグホーンが帰ってきた。ボロボロになりながらもまだ現役であった。まったく日本車ってエライ。ピーターは相変わらずだったが、いつもの無精ひげが無い。そうか「彼女が出来た」と言っていたっけ、と、合点。
 「食料、何も買ってこなかったぞい」というと、「ダイジョウビ、心配すんな」。
シャワーから出てくると、ビール、ワインが待っていた。コンロの上ではジュージューとステーキが音を立てている。「カンパーイ!」飲む、喰う、喋る。
※ちょっとだけよの日程なのに(4/28アップ)
 マタウラ着の翌日、クライストチャーチから来ているアランという植物学者とピーターが釣りに出かけた。オラは釣り券とか食料や酒類の買い出しとか銀行にもちょっと用事があるので一緒に行くのをパスし、15分ほどのところにあるマタウラ村よりちょっと大きな町ゴアに出かけた。
 取りあえず一番大事なもの、酒屋に行ってワイン赤白一本ずつ、ビール24本入り一ケース。次は大事な食料。なじみのスーパーで、しょうゆ、米などジャパニーズ必須アイテムを確保。これで一安心、あとは事務的にチャッチャとこなし、帰るとまだ昼前、そんじゃちょこっと釣りでも行こうかいなとばかり釣り道具を揃え始めたら、あら大変!佐藤さんちからすべて持ってきたとばかり思っていた釣り道具、忘れ物ばかりであった。ベストが無い、帽子が無い、ランディングネットが無い。ベストに入っている筈の毛針も勿論無い。マタウラに明るいうちに着きたいという焦りがゆえの忘れの物である。あのとき、佐藤さんに「全部持ちましたか?」と言われたのに、よく確認もせず「ウン、大丈夫」・・・全然大丈夫ではなかったのねぇ〜。
 というわけで、この日は毛針巻き。しかし10個ほどで飽き、本読み。なぁ〜に、今の時期の毛針のパターンは分かっているのでこれで十分である。焦ることはありません。
 ピーターとアランが帰ってきた。一緒にビールを飲み始めると、ネルソンのピーター、同じ名前だが別人である。それとクライストチャーチのギャバンがやってきた。彼ら全員、農家のクーパーがやっているコテージに泊まっている。例のごとく今日の釣果のお話で盛り上がる
 ギャバンが「ケン(オラのこと)はどうだった?」というので、「毛針少し巻いて本読んでた」と言うと「な、な、なにー!日本からわざわざきて本読みだー?」とビックリしている。ピーターが「ケンはこれまでにもう充分釣っちゃったんだよ」と説明すると、ギャバン、すっかり複雑な顔になり、ゴモゴモと口ごもってしまった。(そりゃそうだ、現地の釣り師より旅人のほうが余裕ぶっこいてりゃ、そうもなりやす)。
 その晩はこのメンバーにピーターの彼女マーガレットとゴアの女ボス、ヘレンを交えゴアのタイレストランで夕食パーティー。そのあとはマーガレットの家で酒飲みパーティー。その次の日は釣りを少しやり、またパーティー。ピーターの家でオラの歓迎パーティーだ。まぁ、ようするに口実を探して酒飲みをやるのがマタウラ流。飲んべいのオラとしては望むところである。
※また飲み会の話・・・(5/11)
 を書きたいのだけど、その前に少しだけ釣りの写真。アランとピーターとオラの三人での支流の釣り。
※今度はほんとに飲み会の話だい(6/10)
 ショーンの家でのパーティ。数十人ほどの大パーティだったので、知らない顔が半分くらい居たが、当然残りの半分は知り合いなので、そのみんなと挨拶し終わるまでがタイヘン。
   「ハロー、ショーン、今夜はありがとう」から始まり、「やぁ、クーパー、あんたの友達のトレイシーだけど市長になったんだねぇ。ビックリしたよ」「そうなんだよ、ウチでケンも一緒に飲んだろ?覚えてる?あいつが市長だよ。オラだってびっくりさ」
 「ハーイ、ジョン」「やぁケン、まだ竹竿作ってんのかい?」「勿論だよ。仕事だからね。死ぬまでやるさ」
 「あ!アンタのこと知ってるよ。ヒューッて向こうのほうまで飛ばしちゃうのをよく見てたんだよ。ケンっていうのか。オラはコロンっつんだ。よろしくね」・・・てな具合に延々と続くのだ。左手のワインを飲むヒマもありゃしない。 一通り、挨拶し終わったなとばかり、落ち着いて飲み始めるとまた別のひとを発見したり発見されたり。こりゃ参ったぞと思っているうちに、ドン発見。ドン ヘイスンである。オラの記憶が正しければ85歳の筈である。彼のオヤジはその昔、あの山からあっちの山までというくらいの大農場主であった。ドンには何年か前、ライズの嵐の最中に、その昔話を延々とやられて、話終わったころにはライズも終わっていたという苦い経験がある。以降、川で会ってもできるだけ話をしないようにしていたのだが、今回は飲み会なので話をしに近寄った。
 聞けば、なんと今年から釣りをリタイヤしたと言う。「川の石が大きくなったんだよ」 だと。確かに腰も背中もだいぶ曲がってしまった。自分が小さくなった分、石や岩を乗り越えるたびにそれらが大きく感じるのだろう。「川に流されたりしてみんなに迷惑かけると悪いからな。もうヤメヤメ」。
 5歳で初めて鱒を釣り、それから80年間、ずっとマタウラを釣ってきたのだ。勿論それだけでマタウラ界隈では超有名人なのだが、釣り師たちから一目置かれる存在であるレンジャーも長年勤めた。それにもうひとつ、有名な伝説を持っている。下流域のマタウラ川をひとっ飛びで飛び越えることが出来た唯一の人間なのである。そのことを言うと「あ〜ぁ、そんなことがあったなぁ、あのときはうんと渇水だったんだ。ずーっとずーっと昔の若い頃の話だよ」。遠い目になったその顔を、隣に座っていた彼の奥さんが微笑みながら覗き込んだ。