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'08のNZ記
※夏だった(08/1/4アップ)
元旦、朝起きると雪。5センチくらい積もっていた。それを踏みしめ家を出た。タクシー→東北新幹線→京成線(成田泊)→747機→シンガポールでまた747に乗り換え、やっとこNZ南島に到着。「もう乗り物はたくさん」と言いたいところだが、今日は数時間のロングドライブ。また乗り物である。まぁ地図でみても遠いのは一目瞭然なわけなのでしゃーないちゃーしゃーないわけである。
夕べはまたまた佐藤さんちに泊めてもらった。ヒレ肉でバーベキューという豪勢な夕食をご馳になり、夜遅くまでビールやら日本酒やらいただき、気が付いたら朝。
昨日の最高気温31度。赤道を越えてくると、やはりそこは夏だったのだ。
※晴れると嬉しい(08/1/17アップ)
今日は朝から雨。この旅で初めての本格的雨である。なにしろ来てからずっとカラカラの晴れで、緑のじゅうたんのような丘陵の牧場が続いているはずのこの一帯は、あちらこちらが乾ききって枯れ草色になっていた。農家はさぞかしキリストさんに感謝していることであろう。
しかし、昨日は快晴。ピーターがその前の晩「次の日は雨になるから明日行こう」と電話をかけてきた。彼にしては珍しく朝早くからという誘いだった。朝、カナダから毎年来ているハリーをモーテルから拾い、2時間ほど離れた湖に行った。
途中、見渡す限りの青空に我々3人はウキウキとなり「最高の日だな」口々に何度も言った。特にワシにとっては青空は不可欠のもの。なにしろ湖でも魚を見つけてからドライで釣るこを喜びとするドライフライフィッシャーマンだから、白い雲などがあるとそれが水面に反射し、水中を見通せなくなるのだ。
さて着きました。風裏になっている湾の脇に車を止め、見ると、水面は静かである。車を降りてしばらく見ても静かである。つまりライズが無い。本来なら水面に落ちるグリーンビートルにあちらこちらでライズがある。今はそういう時期の筈なのだ。
実は、今日のガイド役はワシ。どうしたもんかと困惑してしまうのであった。ハリーは湖といったら流れ込み周辺で沈めて釣るというやり方しか知らないひとなので、ライズが無くても平気だろう。でもピーターはどちらかというとドライでねらい打ちタイプなのだ。さて、困ったぞとしばし考えを巡らしながら、岸辺に立ちつくしていると、岸に沿って悠然と泳ぐ2匹のニジマス発見。「見ろ見ろ!」と叫ぶとピーターは「ィヤッホー!」。ハリーは「こんな近くを泳いでいくのか?!」と驚いている。なにしろ岸から1mも離れない30cmくらいの浅瀬をクルージングしていくのだから驚くのも無理はない。とたんにふたりは浮き足立ち、ウェーダーをはき始めた。
一番乗りはピーター。グリーンビートルの毛針を投げると一発目で決まり、リールがギャーギャー鳴った。
ピーターには昨シーズン、グリーンビートルでの釣りを教えたのだが、ワシの毛針とその虫の色を見比べて感激し、「オレにもその色の材料を分けてくれよ」とせがみ、たくさん巻いてまた行ったのだが、そのときはすでにその虫のシーズンは終わっていたのだった。だから今年のシーズンをとても楽しみにしていたのである。ちょっと痩せたニジマスであったが、「一発目でだよ、一発目で!と大喜びであった。
次にハリー。彼が準備しているあいだ鱒の行方を追っていたワシが「あそこに居るよ」と教えてやると、「ヨーシ!」とばかり勇んで投げる。が、食わない。また投げる。食わない。何度かして「見失っちゃったよ」と肩を落とした。「大丈夫。また寄ってくるから」と言い、ワシも身支度を整えて出陣。ロッドは9フィート8番。今日初めて使う海用ロッドを作るためのテストロッドだ。ティペットが4Xなので8番竿ではミスマッチであるが、ビルダーとしての職業がら、こういう選択もアリ。投げてみるとNZでいつも使う5番と比べ、「竹竿!」という重さが心地よい。グッと曲げてやると8番ラインがドーンと飛ぶ。日本に居る間に路上で少しは振ってみたのだけど、やはり実践で振るのは格別。しばらくの間、鱒釣りそっちのけでキャスティングを楽しんでしまった。
さて、魚を探しながら岸辺を歩くと、居ました。それも次々と。それらに投げるが、みんな毛針を見切って逃げてしまいます。まだグリーンビートルが飛ぶ時期には少しだけ早すぎるようだ。ピーターの一発目はただラッキーだったということか。そういえば彼のリールもあれ以来さっぱり鳴っていない。こういうライズの無い場合、普通はダムゼルフライといううぐいす色の長めのニンフもどきを沈めてチョイチョイと引っ張れば簡単に釣れるのだけれど、好みの問題として、ワシはそれじゃ面白くない。毛針を小さめのチェルノに変え、投げると何匹かの中にやっと食ってくれるのが居ました。さすがニジ鱒、たいした大きさではないのに50mほど沖に向かって一気に突進。しかし、見ると竿はティップが少し曲がっている程度。4Xでは8番ロッドをバットから曲げるようなファイトなど出来ないので、当然っちゃー当然。「フェラーリは高速道に乗んないと面白くないんです」と言ったお医者様の気持ちが良〜く分かりました。
しばらくすると向こうの方で、ハリーが雄叫びをあげ、竿が曲がっている。めでたい。
ピーターもまた掛けて、いわく、「ダムゼルフライだよ」。なんだよ、ピーターは簡単に挫折しちゃったのか。もっとも見えてる鱒に対して投げているのだからそれでも十分に面白いのではあるけれど。
と、こんな感じの釣りを一日楽しんだ後、ハリーが「何匹釣った?」と聞くので「ブラウン1、ニジ3」というと、「その足がビロロンとしたドライ毛針で全部釣ったのか?」と驚き、家に着くとチェルノを巻く講習会となってしまった。その巻き方の説明に、ハリーはいちいち驚き感激する。ガイジンは簡単に感激するから面白い。
※何が起きるかわかんない("08/1/22アップ)
前項で書いた雨は、なんと午前中で止んでしまった。またまた晴れ続きである。まぁ牧場はなんとか少しは緑を取り戻したが、川はまだ渇水のままである。
そんな水不足の中、またまたピーターとシーランの川に行った。「'07のNZ記」にも書いた、そう、ピーターがまだ一匹も掛けたことがない川のことだ。この渇水だからまだ海からは遡ってはきていないだろうとは思ったが、なにが起こるか分からないのが釣りである。
今回は前回書いた場所より少し下流。前とは行く道が違う。ピーターはそこにはめったに行かないので「ピーター、行き方覚えてるか?」と聞くと「しまった地図忘れた」と。ワシは「そうか、ちゃんと行けるかなぁ」と言いつつ、実は目をつむっていていも、というのはオーバーだが片目くらいなら全然平気なくらいよく知った道である。ピーターをちょっとからかってみたのだが、ワシが分岐点で左にウィンカーを出すと、「ケン、そこ左に曲がれ」。右に出すとその後で「右だから間違えるな」と後出しジャンケンみたいに言う。もちろん本気ではなく、ガイジンのジョークである。ワシは負けじと「よく覚えてるなぁ」とまたまたからかって「アハハ」と笑う。
砂利道に入ってしばらく行くと、前方の路上にヒツジの大群。牧場の一区切りの中に居るヒツジを別の区切りに移動するとき、ときとして公道を使うのだ。最後尾でヒツジを追う農家のおっちゃんに「行って良いか?」と窓越しに聞くと、その返事より先に「釣りか?水が無ぇもんだから、さかなはみんなプールに集まって、大きいプールなら10匹も20匹も居るど」と言う。ヒツジを怖がらせないよう道の端をゆっくりと追い抜き、おっちゃんの話でやる気満々となった我々は、モウモウと砂塵を巻き上げラリーのごとく飛ばすのであった。
これまで見たことがないほどに浅くなった川をさかなを探しながら上流へと歩く。しかし見つからない。瀬の中はもちろん、沢山集まっているというはずのプールにも居ない。それでもめげず、どんどん歩いていくと、これまでで最大のプール。深さも優に5メートルはあろう。ここなら居るだろうと両岸い分かれ時間を掛けて丹念に探すが、・・・一匹も・・・見つからない。「あぁ〜ぁ」と落胆しつつ、ここまで来たついでだからもう少しだけ見てみるかと上流に歩き始めると、「居た!」「何処だ?」「目の前だピーター、かがめ!」プールに流れ込んでいる長いトロ場の1メートルくらいの底にじーっと動かない黒い陰。やっと居たのである。
「ケンが見つけたんだから、やれ」と対岸で叫んでいるが「ピーター、釣れない記録をこいつで破れ!」と譲ってやると、「よ〜し」と近すぎている彼はかがんだままの姿勢で後ずさりし、戦闘態勢に入った。高いほうの岸に居るワシからは丸見え。ピーター側からは見えにくい筈である。6から8ポンドの魚だぞと言いつつ、こちら側から位置の指示を出す。
投げようとするのに待ったを掛ける。ユラ〜っと横に動き始めたからである。とその向かう先には水面に浮かぶ黄褐色の虫が・・・ビートルのようである。それを超スローモーションで頭を出し「ぐぁぶぅっり」と食った。これで完全にピーターは位置が分かったであろう。「見えてるか?」と聞くと「見えた見えた」と。
ねらいを定め、投げる。と、さっきのようにスローでユラ〜っと寄っていく。自分で釣るよりハラハラものであるが、鼻っつらが毛針にさわるほど近づいたと思ったら見切りやがった。「ピーター、見破られたぞ。毛針何付けてる?」というと「チェーノボー!」チェルノブイリのことである。「ビートルの方がいいかな?」「ウン」。
毛針を取り替え、投げると、まったく本物の虫を食ったのと同じ動きで・・・「食ったぁ!」。キャストする前から顔を紅潮させていたピーターだが、しっかりと間合いを取りグイッとフッキング。「ピーター、完璧!」。「ィヤッホー!!強ぇーっ。こいつものすごい力あるぞ!」とファイトしながら騒いでいる。巻いては出され、巻いては出されを何度も繰り返して、やっとネットに入った。ついにこの川の鱒を釣ったのである。「コングラッチュレイションズ」と川を超えて見に行く。量ってみると「6ポンドとクォーターのブラウン」。「ヤッホー」と言ったり「イエス!!」とガッツポーズしたり、まだ喜んでいる。アベレージを少し超える程度のサイズなのだが、フックを外す手が震えていた。興奮しているのだ。飽きるほど釣っているマタウラ界隈なら鼻歌混じりなのであるが、なぜかこの川だけは毎回坊主を食らっていたピーター、プレッシャーだったに違いない。
ピーターのカメラとワシのカメラとで何度も記念写真を取り、リリース。「見ろよ、全然疲れた様子ねぇぞ、ほれもうあんなに元気に泳いでいった」「ウン、ホントだ、ここの魚は強いな」。そして、空に向かって念を押すように「イエス!」ともう一度ポーズを決めたのであった。
さて、あの農家のおっちゃんの話はウソだったのか、と、いうと、実は本当だった。
この一匹のあと、またまた延々と居ない区間が続き、とあるプールにたどり着くと「ンガー!」とピーター唸ったのだ。数えると少なくとも30匹以上の鱒が3メートルほどの底に集まって、蛇のようにとぐろを巻いてゆっくりとグルグル回っているのである。スポーニングの動きとはまったく違う動きだ。すべての魚がスプークしているときのように底にへばり付いてゆっくり回っているだけなのだ。キャストしてみるが、ラインが落ちた瞬間ザワザワっととぐろがほどけ、すぐまた黒い大きな渦のかたまりとなるのだった。実に不思議な光景である。ピーターもワシもこんなのを見るのは初めてのことだ。異常なほどの減水に恐怖を感じた鱒達の本能の行動なのだろうか。
きっとあと何キロも魚の居ない区間が続き、その先にまたこういうことが起きているのであろう。しばし、それをただ眺め、ため息混じりに「これじゃ釣りになんねぇや」と、かんかん照りの中、ぼとぼと帰るしかなかったのであった。
※プロ?は辛い(08/2/7アップ)
今日はスティーン(Steen Larsen)というデンマークのフィッシングライター兼カメラマンがやってきた。彼もやはり毎年NZに来ている顔なじみである。今回はNZの釣りのDVDを作る計画で撮りまくっている最中だ。
というわけで、マタウラでも撮影となった。むこうからの昨日のメールで朝早いほうがいいだろうというわけで「8時半に迎えに行く」とあった。日本の常識では8時半は決して、と、いうよりむしろ遅すぎる時間ではあるが、この界隈のトラウトバムにとっては早朝である。だから「もしまだ寝てたら起こしてくれ。ドアの鍵は開けとくから」と返信しておいたのだが、今朝は運良く二階で大家がドタバタと音を立ててくれたせいで、その時間にはベッドから這い出すことが出来ていた。
このところマタウラ本流ではあまり釣りをしてなかったので、仲間から仕入れた情報を頼りにいっぱいライズしていたというプールに出かけたわけであるが「ライズがねぇじゃん」。しかし、プロとしては(いつから釣りのプロになったんじゃい!)「釣れません」では済まされない。広いプールの中でもここぞというところに的を絞り、待つこと10分。ライズ発見。しかし単発である。もう少し待つと少し違う場所でまた単発ライズ。そうしてるうちに陽が、そう、紫外線をたっぷり含んだ太陽がレーザー光線のように攻撃し始めた。マタウラ本流の今の時期はそうなるとライズは止み、どこにでもあるただの大川になってしまうのだ。しょうがない、今勝負を掛けないとどうにもならないとばかり、その単発ライズめがけ、投げる。何度か投げるうち、運良く一匹ゲット。
というわけで、とりあえず当初の目的だったキャスティングシーンは撮れたし、ついでにファイトシーンも撮れた。しかしサイズはアベレージ以下。プロとしては(まだ言うんかい!)もうちょいと箔が付くサイズが欲しい。ラインを数メーターほど出したまま大きそうなライズを待っていると「ジャボッ」・・・とりあえず水の上に出しっぱなしにしていたそのラインの先のフライに食いついてしまったのだった。反射的にロッドをあおりフッキングしてしまったのが我ながらなさけない。ワシもスティーンも大笑いである。
それ後ライズは止み、撮影終了。
あ〜ぁ、あのシーンが使われるとは思えないが、もし使われてしまったとしたら、ジャパニーズサムライの恥であるなぁ。でも、どっちにしてもデンマークで知ってる人といえばフリースくらいしかいないことだし、まぁ、どうなってもいいや。えーいクソ!(と、プロは開き直るのである)
※帰るぞー!(08/2/10アップ)
そろそろ帰る日がやってきた。
それにしても今回の釣り旅は実にのんびりとしたものだった。朝遅く起き、天気が良いときだけ、それも気の向くままの方角に出かけることが多かった。
もちろんそうなると釣果はいまいちである。しかし、これで良い。もうサカナを追い掛けて血眼になる歳ではない。なにせ、NZに居る間に日本では二人目の孫が産まれているのだ。いつの間にかそんな歳になってしまったのだ。
実は、今年のマタウラ界隈もまた、ひっそりと静かだった。
毎年モンタナからこっちの別荘に半年来ているフランクとシェリーが来ない。シェリーがモンタナの家でガレージの自動シャッターに首をしこたまぶつけて治療中のためだ。
カナダからのハリーとケイはいつも泊まっていた宿が人手に渡り、泊まれなくなってしまった。そのため日程をかなり少なくし、もうすぐ北島に渡る。
オハイオからのシャーリーンは去年も今年も来ていない。腰痛がひどいらしい。
酔っぱらうと同じ昔の話をする元ガイドのバートはワシが着く数日前、心臓病で逝っちゃった。
この界隈の社会的&フィッシングシーンのボスだったマイケルも数年前に逝ったが、その奥さんヘレンも体の調子が思わしくない。病院からの手術の準備が整い次第入院予定の状態だ。
そんなわけで、ちょっと前にピーターのところでワシらのためにやってくれたさよならバーベキューパーティーは参加者9人という少なさであった。
去年までの、週末はどこかでパーティーという忙しすぎるくらい賑やかな生活が、実にひっそりとして、釣り以外の時間に限って言えば、まるで幽閉生活のようであった。
みんなも歳をとったのだ。
さてと、日本に帰ろう。のんびりとした生活に別れを告げ、仕事が待っている日本に帰ろう。「歳を取った」などとほざいている暇などない日本の生活に戻るのだ。